こちらは、ボドゲ紹介 Advent Calendar 2018の、第25日目の記事です。

前日の24日目は、Jin's さんの『支離滅裂 / Krass Kariert』インスト動画でした。


今年、こちらのアドベントカレンダーは初参加……にも関わらず、いきなりトリです、クリスマス当日のエントリーです。正直いって微妙に心苦しいです^^;  

Twitter で参加募集を見かけて「お? 楽しそう!」と見に行ってみたら、空いていたのが最後の25日だけだったのでした。

しかし、そこでひるまず「ぉおお、最後1スロット空いてる、ラッキー♪」とサインアップしてしまうところが、自分もうまい具合に年齢重なって来たような、都合のいいとこだけアメリカにかぶれてきたような、そこはかとなくそんな気がしております……。


えー、前振りはともかくとして、私おかん、今日この記念すべき平成最後のクリスマスの日に、みなさんからのバトンを引き継いで紹介したいのが『Detective: A Modern Crime Board Game(ディテクティブ)』です。

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なぜ紹介したいと思ったか?  それは本作品が自分(アンドわが家)にとって、2018年に遊んだボードゲームの第1位となる作品であり、さらにボードゲームの「エクスペリエンス」という意味でも、これまで遊んだ作品の中ではトップ3に入る「自分の世界と魂とが揺さぶられる経験」をもたらしてくれたゲームだと感じたからです。

いや本当に、マジで!

こちらは今年 2018 年にポーランドのPortal Gamesからリリースされた推理モノのボードゲームで、デザイナーの1人は同社CEOでもあり、これまでにも何作もの名作を送り出してきたイグナツィ・チェヴィチェック。プレイヤーたちはアメリカにある Antares(アンタレス)という FBI のような、はたまた CIA のような架空の組織の捜査官となって、それはそれは不可思議な事件の捜査を任される……というところから、全部で5つのケースを解くようになっています。

それが、既出の推理物のように似通ったような事件が似通ったパターンで5つ繰り返されるのでなく、ケースが進むごとに、それまでに明らかになった情報や伏線が次々に絡み合い、予想すらつかなかったような奇想天外な展開そして結末へとつながって行くのです。その様は、まるで本格的な長編推理小説を1冊、読み解くような重厚さ!(と、ここまで書いただけで、かなりテンションが上がってしまいました、ぜぇぜぇ。)

そういう意味では、今流行りのレガシースタイルと見なすこともできるかも知れませんが、私個人としてはある意味、ストーリーテリングの真骨頂という気がしました。

以下、本作品にシビれてしまった点を、5つに分類して整理してみました。

シビれた点①:恐るべきストーリー展開
 史実ベースのフィクションになっていて、解き進めているうちに、まるでそれがすべて本当にあったことのようにすら錯覚し始めてしまうほどの肉薄したストーリー設定と描写には「イグナツィ、なんて恐ろしい子なの!!!」と、思わず白目で額に縦線状態になりかけました。しかも何度も。

シビれた点②:数々のギミック
 ネタバレになってしまうので多くは語れませんが、絶妙のタイミングで、腰を抜かすような仕掛けがあなたを待っています。

シビれた点③:操作の補助として使用するデータベースがすごい
 ゲーム中、前述のアンタレスのデータベースにアクセスするという名目で、専用のウェブツールにインターネット経由でアクセスするのですが、このツールが良いのです。まず「捜査してるぜー!」という気分の盛り上がりが半端ない。そして捜査に必要な情報がとても検索&参照しやすい。さらには、既出の情報と情報の間の関連付けを自動化してくれるという優秀さ。こうした推理ものゲームに付き物の、調べ物や、証拠や証言の整理・参照にかかる時間と手間を取り払ってくれたのはすごいです。

シビれた点④:ケース終了時の判定が明確になった
 シビれた点③とも関連しますが、専用ウェブツールの使用により、ケース終了時にどれだけ事件を解決できたかの判定が非常に明確になった点も特筆すべきです。決め手となる証拠をちゃんと集められたかどうかは、ウェブツールでのアクセス状況で一目瞭然なので、他の推理もの作品ではなんとなくアナログに過ぎた曖昧になりがちな判定が、本作では程よくデジタル化されています。

シビれた点⑤:協力プレイを重視した作り込みになっている
 以前に拙ブログにも思わず書き留めましたが、本作品ではルールブック中のデザイナーズノートで、作者のイグナツィ自身が、協力プレイを成功させるための手引きのようなものを書き記しています。この配慮だけでもかなりシビれますが、実際にプレイして事件捜査を進めて行くと、1人の考え(あるいは思い込み)だけで前に進もうとすると、ほぼ確実にうまく行かないように作ってあるように見受けられました(苦笑) このような具体的な方法で、いわゆるアルファプレイヤー/奉行問題に何らかの対処を試みた作者には拍手を送りたいです。



冒頭で、ボードゲームのエクスペリエンスとして「自分の世界と魂とが揺さぶられる経験」が、この作品によってもたらされた、と書きましたが、もう少し正確に書くなら「魂がえぐられる経験」とした方が的確なのかも知れません。

人生には時として「出遭ってしまったことで、もう以前と同じ自分には戻れなくなる」小説や映画、あるいは人物や出来事との邂逅がありますが、この『Detective/ディテクティブ』は、私の人生の中で、そうした邂逅のひとつだと思っています。

それくらいにインパクトのあるゲームでした。

そして、この作品は、ボードゲームという手段を通じて、そういう表現が可能なんだぞ、という、新しい地平を自分に見せてくれたような気がしたんであります。


……と、例により、熱く、限りなく主観的に語ってしまいました。


この『Detective/ディテクティブ』、残念なことに、これを書いている2018年12月現在、日本語版が出ていません。(対応言語は、英語、ポーランド語、チェコ語、ドイツ語、ロシア語、イタリア語、フランス語のようです。)個人的には1人でも多くの人に遊ばれて欲しい、その価値のある作品だと思っていますので、ぜひ今後、日本語版が出たらいいなと密かに願っています。(Twitter界隈には、翻訳に取り組んでいる方たちもいらっしゃいます。)

 
機会がありましたら、どうかぜひにぜひに、遊んでみてください。きっと後悔はしないはずです! きっと!きっと!


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